続ドラぇもん第01話

第1話「再会」


「昔は良かったな・・・。」

中学生になったのぴ太は学校の帰り道で、ふとつぶやいた。


ドラぇもんが未来に帰ってからというもの、のぴ太の人生は平凡で退屈なものになっていた。

確にのぴ太は強くなった。昔のようにいじめられることもなくなったし、成績もそれなりに良かった。
しかし、ただそれだけだった。

そこには子供の頃のような冒険がなかった。
ただ楽しくも何ともない毎日の繰り返しだった。


のぴ太はクラブにも入っていないし、特にこれと言った趣味もなかった。

特技のあやとりも友達にバカにされるのがイヤでやめてしまったし、昔、あれだけ夢中になった、しずがちゃんの事もどうでも良くなっていた。


とにかく、何もない毎日だった。



当時、ドラぇもんに関わった他の連中も、似たような状態だった。

昔から男友達とばかり遊んでいた、しずがちゃんは、女子生徒からは嫌われていて同性の友達はほとんどいないらしい。だが、その分、男関係の交遊は派手で、現在は剛田(シャイアン)と付き合っているという噂だ。

自慢話ばかりしていた金持ちのツネ男は中学に入っても同じことを続けたため、クラス全員に嫌われ、不良グループからひどいイジメを受けている。

父親の会社の業績も思わしくないらしく、両親も離婚寸前で、家庭環境も最悪だ。

のぴ太はツネ男と同じクラスだったが、話しかけられても無視することにしている。
ヘタに関わって、イジメに巻き込まれてしまうことを恐れたためである。



「確かに昔は良かったかもな。今みたいに勉強しなくても良かったし。」


「シャイアン!? 久しぶりだな。」

「その呼び名は恥ずかしいからやめてくれよ、のぴ太。」


下校中、のぴ太にいきなり話しかけてきたのは剛田(シャイアン)だった。
剛田は、当時、ドラぇもんに関わった連中の中で最もましな人生を歩んでいると言える。

剛田はロックバンドを組んでヴォーカルをやっていた。
昔はただ声がデカイだけで、ヘタクソだと思われていたが、それはのぴ太たちが子供で、理解できなかったせいだろう。

それに昔のような暴力的な性格ではなくなり、太り気味だった体型も身長が伸びてちょうど良くなったし、バンドのヴォーカルをやっているだけあってルックスも良いため、女子生徒にも人気があった。


「なぁ、のぴ太、今度の文化祭でライブやるんだけど、チケットやるから見に来いよ。」

「遠慮しとく。俺、あんまりそういうの興味ないから。」


「そうか・・・。」

「でもチケットはもらっとくよ。うちのクラスの女子どもにやったら喜ぶぜ。おまえ、人気あるからな。」


「ふーん。でも、まぁ、できればおまえが来いよ。」

「ああ、わかったよ。ところでさ・・・。」


「なんだ?」

「・・・いや、なんでもない。」



のぴ太は、剛田がしずがと付き合っているという噂について聞こうとしてやめた。
まだ未練があると思われたくなかったからである。



「そういえば、ツネ男は最近どうしてるんだ? おまえら同じクラスだろ?」



どうやら剛田はツネ男が不良グループからいじめられていることを知らないようだ。
剛田のことだからツネ男がいじめられていることを知れば、だまってはいないだろう。
ツネ男には悪いが、ヘタに騒ぎを起こされて巻き込まれては困る。

そう考えたのぴ太は答えた。


「あいつは元気でやってるよ。」



家に帰ったのぴ太は、いつものように机の引き出しを開け、中に何もないのを確認すると、敷きっぱなしの布団に寝転がった。

のぴ太は考える。


ドラぇもん・・・。

いつのまにか家族や友人とドラぇもんのことを話すのは、
なんとなくはばかられるようになった。

写真も残っていないし、スペアポケットもタケコプタも
返してしまったためドラぇもんがいたという痕跡は何も残っていない。

ドラぇもんは本当に実在したのだろうか?
ひょっとして全て俺の妄想だったのではないだろうか?




そうやって、考え事をしている内にいつのまにか夜になっていた。

そして剛田から電話がかかってきた。

「のぴ太、落ち着いて聞けよ・・・。ツネ男が自殺した。」




見つかった遺書によると、ツネ男が自殺したのはやはり、不良グループによるイジメが原因だったらしい。

恐喝された金も数十万円にのぼっていたそうだ。


2日後、ツネ男の通夜で、のぴ太は剛田に呼び止められた。

「おい、のぴ太、ちょっといいか?」


「のぴ太、聞いたか? ツネ男のやつ、何十万円も恐喝されてたらしい!」

「ああ、知ってる。」


「ちくしょぉ!! あいつら、絶対、許さねぇ! ぶっ殺してやる!!!」

「今さら怒ったってしょうがないだろ。」


「でもよぉ!」


「ツネ男は・・、あいつらに復讐したんだよ。」

「復讐?」


「これで、あいつらもそれなりの制裁を受けることになる。」

「だけど、このままじゃツネ男がうかばれねぇよ!」


「そうでもないさ。 毎日、あんな目にあってたんだ。死んだ方が楽だったのかもしれない。」


「おい、ちょっと待て、のぴ太!!」


「おまえ、まさか、ツネ男がこんな目にあってたのを知ってたのか!?」


「・・・ああ。」

「なんで、俺に知らせなかった!?」


「巻き込まれたくなかったからだよ。」

「何!?」


「おまえがあいつらに何かしたら俺にまでとばっちりがきたかもしれないだろ。」

「のぴ太、おまえ!?」


「だから、これからもあいつらには手を出すなよ。俺はツネ男みたいにはなりたくない。」

「のぴ太!! おまえ、それでいいのか!? ツネ男の事、悔しくないのか!?」


「だからって、俺まで巻き込まれたくはない・・・。」

「安心しろ、何かしてくるやつがいたら、全員、俺が殴ってやる! だから・・・。」


「うるせぇ!!何もするな!! おまえが何かしたら俺に迷惑なんだよ!!!」

「・・てめぇ!!! のぴ太ぁあああああ!!」



そのあとは、ただひたすら殴りあった。
腕力では負けていたが、のぴ太も必死に喰らいついた。

殴って、殴られて、のぴ太が動けなくなるまで殴り合いは続いた。

そして帰り際に剛田は、吐き捨てるように言った。

「おまえ、変わったよ。」



のぴ太はしばらく何もせずに、その場に横たわっていた。

幸せだった子供の頃の思い出が頭に浮かんでは消えた。




それからしばらくして、体を引きずりながら家に帰ったのぴ太に、全く予期していなかった客が来ていた。

「やぁ、のぴ太くん、久しぶりだね。」

「・・ド、ドラぇもん?」


実に三年ぶりに、のぴ太に会いに来たドラぇもんだった。

「本当にドラぇもんなのか!?」

「うん。未来から帰ってきたんだよ。」


「は、はは・・・・。遅いじゃないか、ドラぇもん。なんで今まで・・。」

「・・そんなことよりものぴ太くん、どうしたんだいその傷?」


ドラぇもんは心配そうな顔で言った。

「またシャイアンにいじめられたのかい?」




「・・・・・・・・・。」

「のぴ太くん・・・?」


「・・・帰れよ。」

「え?」


「帰れって言ってんだよ!!」

「ど、どうしたんだい、のぴ太くん?」


「うるせぇ!!! もう二度と俺の前に現れるなッ!!!」



のぴ太はドラぇもんに対して、昔は感じたことのなかったような怒りを感じていた。





――つづく――







  • 最終更新:2010-03-28 07:43:27

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